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二重埋没法にまつわる都市伝説 その2 ~挙筋法で眼瞼痙攣・自律神経失調になる!?~

埼玉・浦和のオジスキンクリニックの形成外科専門医の王子富登です。
今日はいままで詳しく触れられてこなかったトピックについて解説とともに私見を述べます。

二重埋没法を挙筋法で行った場合、眼瞼痙攣や自律神経失調になるのか。

正直、かなりデリケートなトピックです。

なぜなら、実際に埋没法後にこうした症状で困っている方がいるからです。

今回の記事を書くにあたって、まず、困っている方を軽視するつもりはないと、あらかじめお伝えしておきます。

ただ、十分に確かめられていない話が、あたかも確定した事実のように広まっていくと、それが強く頭に残ってしまう方もいます。

その方が、二重埋没法の施術前後にこうした情報を目にした結果、不安が強まり、体調にも影響してしまう可能性がある。私は、それをなるべく防ぎたいのです。

少し例を挙げてみます。

ある人がコロナワクチン接種を受けたとしましょう。その人が、ある日SNSを見ていると、

「〇〇社のコロナワクチンを打った方が脳卒中で亡くなった!」
「コロナワクチン接種後に原因不明の不調で困る人が続出!」

という発信を目にしました。

ここでは、ワクチンと症状の因果関係について論じたいわけではありません。こうした情報を目にしたとき、不安がどのように膨らむか、という話です。

多くの方は、

「ふーん。本当に関係あるのかな。」

と思うかもしれません。一方で、不安が強くなった方は、

「えっ!!もう打ってしまった!そういえば、なんだか頭がすごく痛い気もするし、体もだるい。でも、打ってしまったものは戻せない。どうしよう……。」

と感じるかもしれません。

一度そのように考え始めると、人間は不思議なもので、頭の中で負の思考ループが回り続けることがあります。体のちょっとした変化も気になり、それがまた不安につながってしまうのです。

これを埋没法に置き換えてみましょう。

ある人が二重埋没法を受けようと思い、たまたま目に入った広告の大手美容外科に向かいました。

そこで二重埋没法を受け、術後の腫れも落ち着いて、綺麗な二重まぶたになりました。アイプチいらずで化粧も楽しめて、本当に楽しく毎日を過ごしていました。

そんなある日、SNSを眺めていたところ、

「二重埋没法のうち、挙筋法を受けると眼瞼痙攣になったり、自律神経失調のような症状が出る可能性がある。」

という発信を見かけてしまいました。

気になって、自分が受けた美容外科の埋没法の種類をホームページで調べます。そこには、

「当院の埋没法は挙筋法です。うんぬんかんぬん」

という文字が。

ハッとして、心臓が止まるような感覚とともに、そのまま検索を始めてしまう。調べる媒体はもちろんSNS。

SNSには、正確な情報もあれば、根拠がはっきりしない情報もあります。ただ、不安なときにどうしても目につくのは、派手な言い方をしているアカウントの発信です。

例えば、次のような、因果関係を断定する投稿です。

「挙筋法を受けてから、まぶしくて、目が開けられなくて、目の奥が痛くて、外に出られなくなった人を知っている。」
「挙筋法はミュラー筋を痛めるため、不眠や抑うつ状態、自律神経失調になりやすい。」

するとどうでしょう。その埋没法を受けた方は、

「なんだか心配になってきた。そういえば目の奥が少し痛い気もする。まぶしくて、しかめっつらになっている気もするし、最近あまり寝られていない気もする。」

と、ますます不安になるかもしれません。

そして、その後に調べるのは、

「埋没糸抜糸」

です。

「早く抜糸しないと。抜糸できなかったらどうしよう。抜糸しても症状がよくならなかったらどうしよう。」

焦りながら、抜糸を検討するのです。それ自体がストレスになり、負の思考ループが回り続け、さらに苦しくなってしまう。

疲れ果てて、以前とは別人のような表情になって、抜糸をしてくれるクリニックの門をたたくこともあるでしょう。

でも、ここで疑問がわきます。

果たして、本当にその方が受けた埋没法そのものが、不調を引き起こす原因となっていたのでしょうか。

埋没糸などの身体的な問題だけでなく、埋没法後の不安や精神的なストレスも、大きく関わっていたのではないでしょうか。

はじめは少しの不安で海をのぞいただけだったのに、真偽が定かでない情報の波にのまれ、溺れてしまったのではないでしょうか。

もちろん、埋没糸による刺激など、実際に身体的な問題が起きている可能性もあります。その確認をせずに、「ストレスのせいです」と片づけてよいわけではありません。

ただ、挙筋法は広く行われている術式です。それなのに、術式の名前だけを見て「不調の原因はこれだ」と決めてしまうのは、少し飛躍があるように思います。

挙筋法を受けた方と、受けていない方で、こうした症状が出る割合にどれほど違いがあるのか。そこは、きちんとした比較データがなければ判断できません。

ここからは、私の診療経験をもとにした考えです。

二重埋没法後に、目の開きにくさ、目の奥の痛み、まぶしさ、しょぼしょぼ感、まばたきの不具合などが起きた場合、埋没糸そのものの問題よりも、術後の不安や精神的なストレスが大きく関わっているケースがあるのではないかと考えています。

なお、こうした症状があるからといって、すべてが眼瞼痙攣というわけではありません。ここでは、診断が確定していないものは「眼瞼痙攣様症状」としてお話しします。また、不眠や頭痛があるだけで、自律神経失調と判断できるわけでもありません。

私は、眼瞼痙攣やそれに似た症状がある方を診察する機会がよくあります。

患者さんからいろいろと深く話を聞いていくと、症状が出た時期をはっきり覚えていることが多いです。

「3年前の冬から」
「去年の5月から」

というように、始まった時期が明確なんです。

余談ですが、一般的な加齢性の眼瞼下垂症の方は、まぶたが下がってきた時期をはっきりとは覚えていないことが多いです。

そこで、その時期に何か大変なことがあったのかを聞いてみると、大きな精神的・肉体的ストレスがかかる出来事が重なっていた、というお話を伺うことがあります。

いままで患者さんから伺ったエピソードとしては、愛犬との死別、親の介護が始まった、職場でのストレス、子どもの中学校受験など、さまざまなケースがありました。

もちろん、その出来事が発症の原因だったとは言い切れません。症状が出たことで、ストレスが増えた可能性もあります。

眼瞼痙攣は、原因や仕組みがすべて解明されているわけではありません。一方で、ボツリヌストキシン療法などの対症療法はあります。

私は、ストレスこそが眼瞼痙攣の症状の出方や悪化に関わっている可能性が高いと考えています。

ここで、埋没法後の不調の話とつながってくるのです。

二重埋没法というイベントの後には、

「二重幅が腫れていて広い。本当に狭くなるのかな。」
「左右差がかなりあるけれど、落ち着くのかな。」
「なんとなくゴロゴロするし、引っ張られる感じがする。」
「たまに頭痛がある。これは埋没法のせいなのかも。」

など、いろいろな心配事が出てくることがあります。

こうした心配が重なるなかで、もともとの症状が強くなったり、目の違和感が気になって仕方なくなったりする方もいるのではないでしょうか。

それに加えて、こうした症状を施術したクリニックや医師に問い合わせた際に、

「じきに治るので、数か月は様子を見てください。」
「その症状は埋没法と関係ありませんので、眼科に行ってください。」

とだけ言われ、十分な説明が得られなければ、不安とストレスはさらに増えてしまいます。

経過を見ることや眼科の受診が必要な場合もあります。ただ、その理由が伝わらなければ、患者さんには冷たく対応されたように感じられるでしょう。

そうすると、過去の出来事まで気になってきます。

「そういえば、あの先生、デザインが一瞬で雑だった気がする。」
「手術中にすごい力でまぶたを引っ張られた気がする。」
「同じ病院、同じ先生で埋没法を受けて、失敗されたという人をSNSで見つけた。」

そして、たどりつくのが、ネットやSNS上での「挙筋法で眼瞼痙攣・自律神経失調になる説」です。

この段階では、症状に加えて不安もかなり強くなっているはずです。私は、その不安がさらに症状をつらく感じさせることもあるのではないかと考えています。

ちなみに、私はいままで数多くの埋没法の施術から術後のフォローまで経験していますが、私が把握している範囲では、眼瞼痙攣様症状を理由に抜糸に至った方はいません。

もちろん、これだけで「挙筋法ではこうした症状は起きない」と証明できるわけではありません。

ただ、手術説明から施術、術後のフォローまで一貫して担当し、不安があれば相談してもらえるようにしていることは、患者さんの精神的な負担を減らすうえで役に立っているのではないかと思っています。

それが症状の出方にどれほど影響しているのかは、私の経験だけではわかりません。

それでも、医者は患者さんに安心を与えるべき存在だというのは、私が大切にしている考えです。症状を確認し、必要な説明や対応をすることが、その安心につながるのだと思います。

埋没法後に不調がある場合は、まず身体的な問題がないかを確認する。
そのうえで、不安やストレスがどれほど重なっているのかにも目を向ける。

残念ながら抜糸が必要なケースもあると思います。ただ、ネットの情報だけで「早く抜糸しないと」と一人で追い詰められる前に、医師と相談してほしいと思います。強い痛みや見え方の変化がある場合は、早めに診察を受けて、症状や心配事などを細かく伝えましょう。また、診察をする医師の姿勢として、症状で困っている方の声を大切にすることと、その症状の原因を決めつけないことが必要だと考えています。

参考文献

1.Colloca L, Barsky AJ. Placebo and Nocebo Effects. N Engl J Med. 2020;382(6):554–561. doi:10.1056/NEJMra1907805.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32023375/

2.Bräscher AK, Raymaekers K, Van den Bergh O, Witthöft M. Are media reports able to cause somatic symptoms attributed to WiFi radiation? An experimental test of the negative expectation hypothesis. Environ Res. 2017;156:265–271. doi:10.1016/j.envres.2017.03.040.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28371755/

3.Defazio G, Hallett M, Jinnah HA, Conte A, Berardelli A. Blepharospasm 40 years later. Mov Disord. 2017;32(4):498–509. doi:10.1002/mds.26934.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5941939/

4.National Eye Institute(米国国立眼研究所). Blepharospasm.
https://www.nei.nih.gov/eye-health-information/eye-conditions-and-diseases/blepharospasm

5.Mizuno T. Treatment of Suture-related Complications of Buried-suture Double-eyelid Blepharoplasty in Asians. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2016;4(8). doi:10.1097/GOX.0000000000000835.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5010330/

※これらの文献は、眼瞼痙攣、ノセボ効果、埋没法の合併症についての参考資料であって、挙筋法と眼瞼痙攣・自律神経失調との因果関係や、個々の患者さんの症状の原因を直接証明するものではないです。

浦和駅1分の美容皮膚科・まぶたの治療【OZI SKIN CLINIC】

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