形成外科専門医の王子富登です。
気分一新しての新ブログ開始です。
浦和にあるオジスキンクリニックで手術をするようになってから早5年。
技術を高めつつ、患者さんからいろいろなことを学ばせてもらいました。
そろそろそういったことをブログで皆様に還元できればと思い、
「まぶたコラム」という形でのブログ再開を決めました。
まぶたの手術に関するマニアックな経験を伝えていきたいと意気込んでいます。
今回の記事は、私が大好きな手術である二重埋没法についてです。当院ではOZIダブルループという、キラキラネームでもなく、シンプルな名付けでもない、絶妙な施術名で二重埋没法を提供しております。
施術ページはこちら↓
私は二重切開法も二重埋没法も同じくらいの思い入れやこだわりがあり、
どちらも常に全力で取り組んでいます。
しかしながら手術件数はもちろん二重埋没法のほうが多いです。
それだけ需要が多いということですね。
数年前までは20分くらいで終えていた私の二重埋没法ですが、
どんどんこだわりとチェックポイントが増えていき、いまでは40分くらいはかかるようになりました。
「年をとって、動作がゆっくりになってきたのでは?」
と思う方もいることでしょう。
「時間かけすぎ」「手際が悪いんじゃないの?」
特に埋没法に思い入れやこだわりがないお医者さんならこう思うはず。
でも私にとっては「退化」ではなく、「進化」なのです。
より良い埋没法を追求し続けた結果、多くの作業工程と確認工程が必要になってきたのです。
結果もより安定するようになっています。
いままで数名の形成外科の医師に私の埋没法を見学してもらったことがありますが、おそらく私のやっていることに若干引いていると思います。
でもそれでいいのです。
狂気のようなこだわりのなかに私らしさが詰まっているんです。
いつか私なりの工程も詳しく解説できればと思います。
さて、今回の話題は「二重埋没法にまつわる都市伝説」について。
「二重埋没法は人生で3回までしか
できないってほんとですか?」
この質問、多い時で一日に3、4回聞かれます。
結論からいうと、間違っています。
誰がこんな噂を流したのか謎ですし、なぜ3回なのかも謎です。
実際にはケースバイケースというべきなのでしょうが、この話を否定する理由としていくつかあります。
〇そもそも埋没法1回のダメージはやりかたや手技による。
〇一般的に二重切開のほうがダメージが大きく、リスクも高い。
そもそも埋没法1回のダメージは
やりかたや手技による
埋没法1回のダメージは、
①皮膚に穴をあける長さや
皮膚の下の組織(眼輪筋)を切除する量
②埋没の糸を縛る強さ
③糸の本数
の3要素によって変わると考えています。
なるべくダメージを少なくするためにはそれぞれの要素に気をかける必要性があります。順にみていきましょう。
①皮膚に穴をあける長さや皮膚の下の組織(眼輪筋)を切除する量
表に糸玉がくる方法であればなるべく皮膚側の穴を小さくしたり、眼輪筋の切除をしないようにしたり、そもそも裏どめ(まぶたの裏の結膜に糸玉がくる方法)にしたりすれことでダメージは軽くできます。
②埋没の糸を縛る強さ
埋没法の適切な糸の縛りの強さを意識して埋没法を行うことが重要です。強く縛りすぎるとダメージは甚大となります。まぶたが薄いかたは弱めに縛る。まぶたが分厚い目のかたはすこしだけ強めに縛る。などの気配りが必要なんです。縛りが弱いと腫れが弱いですが、持ちが悪くなる傾向になり、縛りが強いと腫れがちですが、長期的な持ちが良くなる傾向にあるのも埋没法の奥深さです。この話題だけで1時間は話すことができます。(ちなみに余談ですが、「埋没法の縛りの強さなんて調整できないです」とおっしゃるお医者さんを何度かみたことがあります。しかし、そういう意見のかたたちは、埋没法を軽視しているか、手技が未熟か、そもそも二重の強さという概念を持っていないので調整する気がないかのどれかです。)
③糸の本数
埋没の糸がまぶたの中にたくさん存在することは喜ぶべきことではありませんが、多くの場合で問題は起きません。そもそも、二重切開法や眼瞼下垂手術でも溶けない糸をまぶたの中に片側1~6本程度残してくる医師も多くいるので、埋没法だけがまぶたのなかに溶けない糸を残すわけではないことも知っておくべきことです。(今までの二重修正の経験のなかで、と埋没法以外の溶けない糸をたくさん除去してきましたが、最高で16本の溶けない糸を抜いたことがあります。たくさん糸が入っていても瞼は外見上も機能面も問題はありませんでした。)
糸が残っていることはほとんどの場合で大きな問題はないといえども、『糸を残す』ということは捉え方によってはダメージとなります。なので方針としては、
一度にいれる糸の本数を少な目にすること。
再度埋没法をする際に糸を抜くこと。
などで対応していけばこの問題も軽くなるはずです。いままで、一度の埋没法で片方のまぶたに4本の糸を入れる手術をみたことがあります。個人的には多すぎるなと感じます。私が妥当だと思うのは片側に対して糸2本です。(いろいろな意見があると思います。)
以上のことに気をつけて二重埋没法をするのであれば、3回という制限はあまり考えなくてもいいと思っています。
極端にいえば、埋没法0回のまぶたと埋没法3回のまぶたでは埋没法0回のまぶたのほうが健康的でダメージが少ないですが、埋没法3回のまぶたと埋没法4回のまぶたと埋没法5回のまぶたではそんな大きな違いはないでしょう。
一般的に二重切開のほうが
ダメージが大きく、リスクも高い
当たり前といえば当たり前なのですが、針穴から糸を通すだけの埋没法と、皮膚や皮膚の下の組織を切って二重の構造を癒着でつくる二重切開法を比較したら、ダメージが大きいのは後者です。小学生でもわかります。
もちろん例外もあると言っておきましょう。とても手術が上手な医師の二重切開を受けた場合と、点止め瞼板法の埋没法を受けた場合では、後者の埋没法を受けた場合のほうがダメージが大きいでしょう。(なぜ点止め瞼板法がダメージが大きいのか。これについてはまたコラムで解説します。)ただし、これは極端な例であって、一般的には二重切開法のほうがダメージが大きいのは明白でしょう。
また、ハム目や強い食い込み、幅広すぎる二重、など、社会生活をおくる上で障壁となりえる二重切開法特有のリスクもあります。こういったことは埋没法ではほぼ起こりえず、万が一の場合は抜糸すれば事なきを得ます。つまり埋没法のほうが修正もしやすく、リスクも少ないのです。二重切開を多く執刀し、様々な観点から独自に研究してきた私ですら、二重切開は完璧にコントロールするのが難しい手術だと感じます。
なのになぜ多くの医師は二重切開をすすめるのでしょうか。
二重埋没法より二重切開のほうが、リスクが少ないと思っているのでしょうか。
そんなにご自身の二重切開に自信があるのでしょうか。
埋没法よりも自分の二重切開の仕上がりのほうが綺麗だと自信を持って言えるのでしょうか。
自信があると胸を張って言える医師はかなり少ないと思います。
私が考える二重切開の適応
「それなら二重切開はどういう人がやればいいのでしょうか」
という疑問も出てくると思います。その答えとして、つまり二重切開の適応としては以下のことを考えています。
・二重埋没法での二重の持続期間が1〜2年以内の方
・アイプチでは二重にならないくらいの厚めのまぶたの方
・皮膚のたるみや脂肪が多い方
・強い逆さまつげの方
つまり埋没法で二重になれないかたのための手術が二重切開ということなんですね。
上記を言い換えれば二重切開のメリットにもなります。具体的には、
・食い込み(正確には引き込み)を強くすることができる
・皮膚を切除することができる
・脂肪を切除することができる
・逆さまつげを改善することができる
この4つのメリットのうち、何個のメリットを享受できるかを考えることで、二重切開が向いているかどうかの判断の足しになるのです。
私の考える二重埋没法との
付き合い方
二重埋没法がそこそこ持っているし、二重の感じも好きだけど、二重が取れるのが心配だから二重切開をしたいというかたは多いです。そんなかたに伝えたいことがあります。それは私の考える二重埋没法との付き合い方です。つらつらと述べていきます。
二重埋没法が3年以上持ち、その二重にある程度満足するのであれば、二重が薄くなってきた時に埋没を再度受けましょう。それを数回繰り返すのです。そのうちだんだんと月日は流れ、皮膚のたるみや眼瞼下垂症状が出てくることもあると思います。そうなったら二重埋没法ではどうにもならないこともあるでしょう。その時に勇気を出して初めて切開をするのです。そのころにはある程度のご年齢になっていることかと思います。中高年だからといってリスクが低いというわけではありませんが、切開手術を受け入れる時間的精神的余裕や金銭面での余裕は若いころよりあると思います。
若さは財産です。若いうちの過ごし方次第で、輝かしい未来や幸せな人生が待ってます。そんな大切な時期だからこそ、リスクが低い二重埋没法でやわらかく自然な二重を楽しみつつ、二度とない若い時代に集中して楽しんでほしいのです。そんな大切な時期に不要な二重切開で時間や労力を無駄にすることは絶対に避けてほしいのです。くっきりして取れない二重まぶたより大切なことがあるからです。
もし好みが変わったり、たるみがでて少し二重幅を広げたいときには、埋没法を再度受ける時に少し広くしましょう。そういった調整ができるのも二重埋没の強みでもあります。何なら60歳代になっても埋没法でしのげるかたも実際にいらっしゃいます。一方、二重切開を受けて、短期的に修正手術が必要とならずにうまくいったとしても、5年10年と経つうちに、加齢による変化があり、二重を広くしたい、狭くしたい、たるみをとりたい、目の開きをよくしたいなどと希望が出てくるのはよくあることです。その場合、二重切開修正手術が必要となります。また大きなリスクをとることになるのです。
二重切開の修正手術を数多く経験させてもらってきた中年男性である私が思う、若いかたへ伝えたいおせっかいなお話でした。
まとめ
巷で言われている、「二重埋没法は人生で3回までしかできないってほんとですか?」という噂は間違っています。ダメージが少ない方法であれば、はっきりとした回数制限はなく、二重切開よりもリスクやダメージが少ないといえます。ただし、まぶたによっては二重切開がどうしても必要になるかたもいらっしゃいます。二重埋没法と二重切開法のメリットやリスクなどを比較して慎重に考えましょう。
「もう3回埋没していて、今の優しい感じの二重まぶたは気に入っているんだけど、二重まぶたが取れるのも怖いし、二重埋没は3回までらしいから、ダウンタイムがとれるうちに二重切開しなきゃ。」
と思いたって二重切開法を受けた結果、理想とは程遠い結果となり後悔する人ができるだけ少なくなることをいつも祈っています。
参考文献
百澤 明 編, 美容外科道場シリーズ 埋没式重瞼術. PEPARS. 189. 2022