手術の種類・保険適用・
男女別の治療法を形成外科専門医が解説
目次

はじめに
陥没乳頭(inverted nipple)は、乳頭が乳輪よりも内側に引き込まれた状態を指します。女性に多いとされる症状ですが、実は男性にも見られ、審美面や心理面で悩みを抱える方が増えています。本コラムでは、形成外科専門医の視点から、陥没乳頭の基礎知識から手術の種類、保険適用の条件、男女別の症例まで詳しく解説します。
陥没乳頭とは?
陥没乳頭の定義
陥没乳頭とは、乳頭が外に突出せず、乳輪の内側に埋もれている状態です。軽度から重度まで段階があり、自力で乳頭を引き出せる場合もあれば、器具を使っても突出できない重度のケースもあります。
発症頻度と疫学
日本人女性の約10~20%に何らかの程度の陥没乳頭が見られるとされており、決して珍しい症状ではありません(NCBI: Inverted Nipple, 2021)。また、男性でも一定数存在し、近年は審美的・心理的理由で治療を希望する男性が増えています。
原因
• 先天性:乳管が短い、支持組織が未発達
• 後天性:授乳後の変化、乳腺炎、手術後の瘢痕形成、腫瘍
陥没乳頭の重症度分類
グレード | 状態 | 自力で 引き出せるか |
授乳への 影響 |
---|---|---|---|
Grade I | 軽度 | 可能 | なし〜軽度 |
Grade II | 中等度 | 一時的に可能 | 中等度 |
Grade III | 重度 | 不可能 | 高い障害 |
なぜ治療が必要なのか?
陥没乳頭は見た目の問題だけではなく、以下のような医学的問題にもつながる可能性があります。
• 授乳困難(特にGrade II〜III)
• 乳腺炎、膿瘍、感染リスク
• 衛生面のトラブル(汚れがたまりやすい)
• 乳頭の皮膚炎、ただれ
• 乳がんなど疾患の兆候が隠れる
男性にも起こる陥没乳頭
男性の場合、授乳の必要がないため治療を検討する機会は少ないかもしれません。しかし、
• 温泉や海水浴に行けない
• Tシャツから乳頭の凹みが目立つ
• ボディメイク時にバランスが悪く見える
など、審美的・心理的な悩みを訴える方が増加しています。当院でも、20〜40代男性を中心にご相談を多くいただいております。
治療法(手術)の種類と選択
陥没乳頭の手術は、重症度、授乳希望、性別により最適な術式が異なります。
術式の主な種類
① 乳管温存法
• 将来授乳を希望する女性向け
• 乳管を残しながら皮下で引き出して固定
• 再発の可能性あり
② 乳管切離法
• 授乳希望がない方、再発を繰り返す重度例
• 乳管を切離し、皮膚弁などで固定
• 形の安定性が高い
③Z形成・Y-V形成法
• 重度例に追加で行うことがある術式。必要に応じて追加処置
• 乳頭近くに皮膚切開を加え、安定した突出を維持
④保護器具併用法
• 術後に乳頭を保持する器具を使用
• 形態維持と再発予防に効果的
術後のケアと再発予防
手術後の経過管理は、乳頭の安定と再発防止のために極めて重要です。
術後ケア内容
• 保護器具の装着
• 創部の保護・抗生剤の投与
• 圧迫・ガーゼ管理の指導
• 定期的な診察で形態確認
当院では、術後も専門医によるフォローを継続し、再発率は極めて低く抑えられています。
症例紹介
20代女性(保険適応にて手術)
保険適用の条件とは?
陥没乳頭の手術は、「美容目的」と判断された場合は自由診療となりますが、一定条件を満たすと健康保険が適用されます。
女性の保険適用条件(原則40歳未満)
• 授乳困難がある(妊娠・授乳予定含む)
• 乳腺炎や皮膚炎を繰り返している
• 医師が医学的治療が必要と判断した場合
男性の保険適用条件(非常に限定的)
• 陥没による診断困難(乳がんや腫瘍疑い)
保険適用外となるケース
• 審美目的(見た目の改善のみ)
• 審美目的に左右差調整のみ
• 授乳予定がない場合
当院の特徴と強み
• 形成外科専門医が在籍し、安全・確実な施術を実施
• 男女問わず個別対応
• 術後のフォローアップ体制が充実
• 保険適用の可否も事前に丁寧にご説明
• 女性専門医のため相談しやすい
• 他院修正も多数
まとめ
陥没乳頭は、女性だけでなく男性にも見られる比較的よくある症状です。重症度や希望に応じて治療の選択肢があり、適切な診断と経験ある専門医による施術で、見た目と機能の両立が可能です。保険が適用されるケースもあるため、自己判断せず、まずは専門医に相談することをおすすめします。
「昔から気になっていた」「他院で再発してしまった」「男性でも受けられるのか不安」 そんな悩みを抱えている方は、ぜひ一度当院へご相談ください。